団塊の世代と呼ばれる約800万人が、75歳以上の後期高齢者となる2025年問題はあと数年で訪れます。また2060年には2.5人に1人が65歳以上となると言われております。
すでに少子高齢化や増える社会保障費など大きな問題に直面しているなか、介護業界の深刻な人手不足も課題とされております。
ここでは厚生労働省の進めている介護現場のICT化で、介護業界がどのように変わるのかを紹介したいと思います。
ICTとは Information and Communication Technology のそれぞれの頭文字を取った略語です。日本語では情報通信技術を意味します。
具体的には、介護事業所と医療施設での業務効率化が該当します。
訪問介護や訪問医療に関わるケアマネージャー・ホームヘルパー・看護士・医師などが患者や利用者の情報を共有し、介護分野における多職種の介護情報の連携・活用をしていきます
介護事業所は、患者や利用者の健康状態・医療内容・介護サービス提供のそれぞれのデータを利活用すれば、介護の価値を高めることにつながります。
さらに介護職員の身体的・精神的負担を軽減し、介護の質を維持しながら効率的な業務運営をすることにもつながります。
このようにスマートデバイスを利用して、インターネット経由で情報を共有する仕組みはすでに実施されており、今後すべての介護事業所に必要なことと考えられております。
介護業界では、要介護と認定された方が施設に入居できなかったり、適切な介護サービスが受けられなかったりする方が年々増加しております。
特に問題視されているのが人手不足です。
人手不足が慢性化してしまうと介護スタッフ一人ひとりの負担が重くなり、徐々に介護職から離れていき、終いには介護事業所の運営が難しくなります。
2025年には後期高齢者がさらに増え、少子化の影響もあるため人材供給は悪化していく一方です。
離職者を減らすためにも介護職員の職場環境の改善は必要不可欠です。
人材供給が難しいのであれば、今いる介護職員の現場負担を軽減させて効率を高めることが問題解決の糸口となるでしょう。
ICTを導入することで、介護現場は業務の効率と生産性の向上が見込まれております。
実際に導入されているところでは、介護業界の人手不足を補えることも実証されております。
しかし総務省の報告によると、保健・医療・福祉業界のICT活用率・効果ともに産業全体では最低であり、生産性向上に向けた介護事業所のICT導入を促進しているのが現状です。
■ ICT化のメリット
事務作業やストレスの軽減による生産性の向上
地域間コミュニケーションの活性化
科学的介護の実現による適切なケア
ICTを活用したシステム構築の最大のメリットは、事務作業やストレスの軽減による生産性の向上です。
例えばホームヘルパーが訪問先でスマートフォンから介護記録を入力することで、医療機関やケアマネージャーにも情報が共有されますし、反対に医療機関やケアマネージャーから健康や介護に関するデータをタブレットで先に入手することもできます。
そうすることで事務所に立ち寄らずに次の訪問先へ直行することができるため、時間効率を上げ無駄な労力を削減することができます。
ICT化することは、患者や利用者の情報を一元管理でき記録の二重入力や申し送りルールの不徹底が防げるなど、職員のストレスも軽減されるほか、スタッフ間の情報共有やコミュニケーションが活発化することも期待できます。
さらに蓄積された介護記録をICT機器で分析・フィードバックすれば、科学的根拠に裏付けられた介護が実現でき、より適切なケアへと導くことができます。
総合的に見ても離職率の低下や介護の質の向上には、確かな効果があると言っても良いでしょう。
■ ICT化のデメリット
導入コストが高い
個人情報漏えいのリスク
介護スタッフの育成
ICTを活用したシステム構築の最大のデメリットは、導入コストが高いことです。
ICT化にするためのインターネット整備やパソコンやモバイル端末の準備など、必要な初期費用がどうしても高くなってしまいます。他にもセキュリティ対策が必要不可欠であり、そのためのコストも発生します。
個人情報に関しては、紙ベースとデータ管理どちらも個人情報漏えいのリスクがあるため、これはどちらが良いとは言えません。
介護スタッフの育成では、パソコンやモバイル端末など普段触れることがないスタッフにはICT機器の操作から教える必要があるため、介護スタッフの育成に時間を要することになります。
厚生労働省では、医療・健康分野におけるICTの活用について以下の2つを挙げております。
■地域の医療機関や介護事業者による迅速かつ適切な患者・利用者情報の共有・連携を推進すること
■国民の健康管理、施策の重点化・効率化、医療技術の発展、サービスの向上を推進すること
まず介護記録をICT化することにより、業務の効率化・生産性向上を推進しようとする動きが出ております。
会計システムの電算化や入所者の情報などをデータベース化することで、ケアプランやアセスメントチャートなど書類の作成の時間が軽減できたり、介護記録を持ち歩かずに済みますのでヘルパーが直行直帰できたりするメリットがあります。
次にタブレットデバイスの導入でシフト要請やケアプラン呼び出しなどを行うことができれば、労働時間の削減につながるでしょう。
また見守りロボットなどのIoT機器の導入により、離床や在室などを通知したり、バイタルデータなど取得してケアプラン作成時の参考資料にしたりすることもできます。
介護記録をICT化している事業所は介護業界全体の2割程度と言われており、各業界の中でも介護業界のICT化が遅れております。
特に医療と密接に関わる介護業界だからこそ一日も早くICT化を進めていく必要があると言われております。
これからの介護業界は介護の質の向上とともに効率化を図ることも求められてくるでしょう。
介護の仕事全てをICT化することはできませんが、介護職員の仕事の効率化・生産性向上は可能です。
ICTを活用することは職員の負担を軽減できるため、介護の質を向上させることにつながります。
厚生労働省では介護現場におけるICTの利用を促進しており、介護業界の仕事環境を整えていくことに期待しております。
こちらは厚生労働省による医療・介護におけるサービス提供体制です。
2012年から2025年にかけて、在宅介護・居住系サービス・介護施設共に市場の拡大が見込まれております。
現在の介護では在宅介護のニーズが高まり、薬剤師や在宅診療対応施設、ケアマネージャーなどあらゆる施設・専門家による連携が必要不可欠です。
これらを一元化できるICTによるシステム構築が、これからの介護のあり方となっていくでしょう。