総務省の高齢者人口の統計では、日本における65歳以上の高齢者人口は約3,627万人おり、日本国民のおよそ29%を占めております(2022年9月15日推計)。
超高齢社会では高齢者の増加に伴い、高齢者の一人暮らしも増加を続けております。高齢者の一人暮らしが増えますと、事故や犯罪に巻き込まれるリスクも高くなります。
ここでは、高齢者の一人暮らしの危険性とリスクをできるだけ軽減させるための対策を説明しています。
■ 転倒・ケガのリスク
個人差はありますが、人は年を取るごとに筋力が低下し、柔軟性がなくなっていきます。そのため、普段生活している自宅でも頭をぶつけたり、段差で躓いたりすることが増えてきます。
転倒・ケガのリスクの対策としては、部屋と部屋の敷居の段差をなくしたり、階段に手すりを設けたりすることで軽減することができます。
運動能力の低下は健常者の常識では測れないことが多いため、はじめは地域包括支援センターや各自治体の窓口で相談すると良いでしょう。
■ 認知機能の低下と認知症のリスク
高齢者の一人暮らしは、社会的な刺激や認知活動の減少につながります。日常会話は少なくなり、思考能力や判断力低下にもつながるため、日常的な活動に影響を及ぼすようになります。認知機能が低下してしまうと、身体的な不活動や心理的なストレスなどが引き金となり、認知症のリスクを高めてしまいます。
認知機能の低下と認知症のリスク対策としては、地域の活動や趣味のサークル、ボランティア活動などに積極的に参加することが良いとされております。
コミュニケーションを取るのが苦手な方は、パズルやクロスワード、記憶力を使う脳トレや、ゲームやスマートフォンの操作も良いとされております。
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■ 経済的な困難と財産管理のリスク
高齢者は収入の減少や医療費の増加など、経済的な困難に直面することがあります。一人暮らしの場合は、まわりに相談できないことも多いため、経済的支援が遅れてしまうこともあります。
また個々の状況により異なりますが、財産管理においては適切な記録の保持や重要な書類の整理が必要になります。預貯金口座や保険契約が複数ある場合は管理が難しくなることがあります。
経済的な困難と財産管理のリスク対策としては、家族との連携が最善ではありますが、専門家や地域の支援ネットワークと協力して専門家の助言を受け、経済的な安定と財産の適切な管理を確保することが大切です。
■ 孤独や社会的孤立のリスク
インターネットの普及に伴い情報収集は容易になりましたが、一方で外出が少なくなると、人との交流や社会的なつながりが減少し孤独感が増える可能性があります。インターネットでつながっている感覚はありますが、高齢者が一人暮らしをしていると、外出の機会や交流の機会が制限されることがあります。
孤独や社会的孤立のリスク対策としては、趣味や地域コミュニティの参加などが挙げられますが、インターネットを活用してビデオ通話を行うことでもコミュニケーションを維持することができます。
■ 食事・栄養バランスのリスク
高齢者の一人暮らしにおいて、食事や栄養バランスの偏りから、免疫力の低下や体力の低下、病気のリスクの増加などを引き起こすことがあります。一人の場合は、料理を簡単に済ませてしまう傾向があるため、人によっては外食中心になることもあります。
食事・栄養バランスのリスク対策としては、食事支援サービスの利用を取り入れることが一人暮らしには向いていると言われております。献立は栄養バランスを考えた内容になっており、手軽にストレスなく必要な栄養素を摂取することができます。
また最近では冷凍食品やレトルト食品も進化しており、手間を減らしつつ美味しい食事を味わえます。栄養不足が心配な場合は、医師や栄養士に相談し、栄養補助食品の利用を検討することも良いでしょう。
■ 薬の誤用や健康管理のリスク
薬の誤用は命にかかわる重大なリスクになります。特に薬を複数服用している方は、飲む順番や量など誤った服用方法をすると取り返しのつかない状況に陥る可能性もあります。そのため、一人暮らしの高齢者は健康管理において自己責任が求められます。
薬の誤用や健康管理のリスク対策としては、カレンダーや予定表などに服用方法や服用量を記載しておくなどして、忘れることがないようにしておくことが大切です。薬箱による薬の分別やアラームで飲む時間を予めセットしておくことも重要です。
また医療機関を受診して、定期的な健康状態をチェックして自身の健康状態を確認しておくようにしましょう。
■ 犯罪被害や災害時のリスク
高齢者は身体的な弱さや認知機能の低下があるため、犯罪被害に遭いやすいとされております。窃盗や詐欺、強盗など犯罪行為のターゲットとして高齢者が狙われるケースは、年々増加しております。特に一人暮らしを狙った犯行が多いため、非常にリスクが高いと言えます。
災害時のリスクとしては、避難や避難先での生活に困難が生じる可能性があります。身体的な問題や判断力の低下から非難が遅れてしまうことがあります。
犯罪被害のリスク対策としては、セキュリティシステムの導入や施錠機能を高めるなど自宅や身の安全を守るための対策を行うことです。詐欺対策としては、その場で即答せずに落ち着いて信頼できる家族や、警察に相談することが重要です。家族に成りすましていることもあるため、家族にしかわからないことを質問してみることも大切です。
災害時のリスク対策としては、避難場所や避難経路を予め把握しておくことが大切です。安否確認ができる見守りサービスは、近年加入者が増加しているなど注目を集めております。
■ 運転による交通事故のリスク
高齢者による交通事故は、大きな問題としてメディアでも取り上げられております。自転車やバイク、車の運転など認知機能の低下により、道路標識や信号の理解や判断力が減退する場合があります。
視力や聴力の低下、筋力や反射神経の衰えなど身体的な能力の低下から、交通事故につながる可能性があるほか、薬などの二次作用から事故を起こす危険もあります。
交通事故のリスク対策としては、免許を返納して公共交通機関を活用することが望ましいです。身体的なことをサポートするには、視力や聴力のチェック、薬物の副作用なども含めた総合的な健康管理が必要です。
■ 社会的なつながりの確保
高齢者には家族や友人、近隣の人々との交流が重要です。地域のコミュニティ活動や老人クラブ、趣味のサークルなどに参加することで、社会的なつながりを広げることができます。
今はインターネットが普及しており、遠い場所でも同じ趣味を持つ人と交流することも可能です。ただしインターネットだけでは慢性的な運動不足にもなるため、軽い運動を行いながら交流することも大切です。
■ 定期的な訪問や連絡
家族や友人が定期的に訪問したり、電話やビデオ通話でコミュニケーションを取ったりすることで、孤独感を軽減することができます。特に高齢者の一人暮らしによる孤独死が社会問題として取り上げられており、できるだけ周囲の方が寄り添いお互いで確認し合うことが大切です。
家族の方は、見守りカメラや安否確認できる手段を取り入れることで、健康的な状態の変化にも気づくことができるためおすすめです。
■ 高齢者支援施設の利用
地域の高齢者支援サービスやボランティア団体を活用することで、高齢者に対する訪問や日常生活のサポートを提供することができます。
家族や友人などから適切なサポートが受けられる場合は、支援施設を利用しなくても良い場合があります。健康状態や自立度、施設の利用条件とサービス内容などを総合的に考慮し、最適な選択をすることが重要です。
■ 定期的な健康チェック
健康状態は定期的にチェックし早期の問題を発見・対処することが重要です。定期的な健康診断や医師の訪問などは、健康面だけでなく精神的にも良い方向に働きます。
医療のことはもちろんですが、世間話を織り交ぜることで孤立感を軽減させることにもつながります。
■ 安全対策の強化
高齢者の一人暮らしでは、住居や生活環境の安全性を確保するために、転倒予防対策や防犯対策を行うことが重要です。例えば手すりの設置、床の滑り止め処理、セキュリティシステムの導入などが考えられます。
安全対策には怪我の防止だけでなく、防犯や病気などの予防も含まれます。高齢者を一人にさせないことが望ましいですが、各々事情や環境があるため、見守りサービスや見守りグッズなどを活用すると良いでしょう。
高齢者の一人暮らしは様々なリスクが潜んでおりますが、適切な対策を講じることでリスクを軽減することができます。
健康面に関しては、定期的な健康診断を受診することが重要です。安全面に関しては、修繕やリフォーム等で解決できる部分と見守りシステムなどの活用が必要不可欠かもしれません。孤立に関しては、家族や友人が定期的に連絡を取ったり、訪問したりすることが重要です。
少子高齢化となり年々増え続ける高齢者ですが、住みやすい環境整備と同時に高齢者自身も主体的に取り組む必要があるのかもしれません。