介護保険は要介護認定を受けてから利用するものという認識が一般的ですが、実は認定前から活用できる制度もあります。
介護を受けるということは、周囲に世話をしてもらうというイメージが強いですが、快適に過ごすための手段として認識を改めることが大切です。
ここでは、総合事業(介護保険法では、介護予防・日常生活支援総合事業)と特別訪問看護の2つの制度を中心に介護保険の賢い使い方を説明しています。
※記事の一部はChatGPTで作成しています。

介護保険サービスを利用できる年齢は原則65歳以上と定められております。40歳から64歳までは、厚生労働省が指定する16種の特定疾病に該当する場合のみ利用することができます。
介護保険サービスは、基本的に要支援・要介護認定が必要になりますが、認定結果が出るまでには通常30日程度の時間がかかります。期間中に介護の必要性が生じた場合は、何も支援が受けられないと不安に思われる方が多いようですが、認定を受ける前でも市区町村が独自に提供している制度が用意されております。

介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)は、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることを目指した制度です。
要支援認定が出る前でも、住んでいる市区町村の判断により利用が可能となる場合があるため、相談してみることをお勧めいたします。
■ 具体的に受けられるサービス
総合事業の大きなポイントは、NPOや民間企業はもちろん、地域のボランティアなど様々な組織がサービスを提供していることです。
総合事業で受けられる支援は以下の通りです。
掃除・洗濯・買い物代行・見守りなど
デイサービスなどを通じた運動やレクリエーション
運動指導・口腔ケアなど

このサービスは、正式な認定結果が出る前に市区町村の判断で介護サービスの暫定利用が認められることがあります。
この場合、認定確定前でもデイサービスや訪問介護などの介護保険サービスを利用できます。
ただし、正式な認定結果で非該当となった場合は、利用した分の費用を全額自己負担しなければならないことがあるため注意が必要です。
■ 利用の流れ
認定前でも介護サービスを利用するためには、以下の手続きが必要になります。
(1)市区町村の介護窓口に相談する | 最寄りの地域包括支援センターや市区町村の介護保険課で、認定前でも利用できるサービスについて相談しましょう。 |
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(2)介護認定の申請を早めに行う | 介護認定の申請は早めに行うことが重要です。認定には通常30日ほどかかるため、早めの申請でサービス利用までのタイムラグを減らしましょう。 |
(3)申請後、必要なら暫定利用の相談をする | すぐに介護サービスが必要な場合、市区町村の担当者に暫定利用が可能かどうか相談しましょう。 |

通常の訪問看護は介護保険が適用されることが多いですが、特別訪問看護は末期がんや難病、重度の障がいなどにより24時間の医療的管理が必要な方を対象に、医療保険が適用される点が特徴です。
介護保険サービスとは異なり、要介護認定を受けていない方でも利用できる場合があり、特に認定前から訪問看護が必要な方にとっては重要な制度です。
■ 対象者と利用条件
特別訪問看護を利用できるのは、主に医療的な処置や管理が必要な方になります。具体的な利用条件は以下のようなケースが該当します。
- ✓ 末期がん患者(在宅療養を希望する方)
- ✓ 厚生労働省が定める特定疾患の患者
**例:ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経難病** - ✓ 重度の障がいがあり、継続的な医療管理が必要な方
- ✓ 気管切開をしている方や人工呼吸器を使用している方
- ✓ 退院後、医療的ケアを継続して受ける必要がある方

特別訪問看護の目的は、病院ではなく自宅で適切な医療ケアを受けながら生活できるよう支援することです。24時間対応体制のため、必要に応じていつでも連絡・訪問が可能です。
また、高度な医療処置やケアに対応できる専門的な知識と技術を持った看護師が訪問するため、安心して自分らしい生活を送ることができます。
■ 提供されるサービス内容
特別訪問看護は、在宅での医療的ケアを支える重要な制度です。通常の訪問看護よりも医療的なケアの範囲が広く、以下のようなサービスを受けることができます。
- 点滴・注射・カテーテル管理(中心静脈栄養、胃ろう管理など)
- 酸素療法・人工呼吸器管理
- 創傷(床ずれ)ケアや傷の処置
- 服薬管理・指導
- 寝たきりの方への体位交換や褥瘡予防
- 排泄管理・清拭・口腔ケア
- 理学療法士・作業療法士によるリハビリ支援
- がん末期の疼痛管理
- 家族への介護指導・精神的サポート
- 在宅での看取り支援
- 24時間対応の訪問看護ステーションを通じた緊急訪問
- 主治医との連携による在宅医療サポート
■ 申し込み方法と利用の流れ
特別訪問看護を利用するためには、以下の流れで申請・手続きを行います。
▼ STEP1. 主治医に相談 |
特別訪問看護を利用するには、主治医からの「訪問看護指示書」が必要です。まずは担当医に相談し、訪問看護が適用できるか確認しましょう。 |
▼ STEP2. 訪問看護ステーションの選定 |
訪問看護ステーションを選び、どのようなケアを受けられるかを相談します。特別訪問看護を提供している事業所を探す必要があります。 |
▼ STEP3. 医療保険での適用確認 |
利用する訪問看護が医療保険の対象であるかを確認し、適用範囲や自己負担額を把握しておきます。 |
▼ STEP4. 利用開始 |
訪問看護ステーションと契約し、定期的な訪問が開始されます。24時間対応が可能なステーションの場合は、緊急時の対応も依頼できます。 |
■ 早めに情報収集をする

介護は必要になってから情報を集めるのではなく、事前に介護保険制度の概要を理解して、利用できるサービスを知っておくことが重要です。要介護認定前でも利用できる制度を説明しましたが、事前に情報を得ておくことでスムーズな対応が可能になります。
一般的に情報収集をする方法としてインターネットでの検索や書籍で制度の概要を確認することが多いですが、市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターに相談することもポイントです。
また介護を専門としている方のセミナーや説明会に参加することもプラスになるでしょう。
■ 地域の相談窓口を活用する

介護に関する相談は、市区町村の地域包括支援センターが窓口となっております。特に自分に該当するサービスが見つからない、またはわからないという方は、まずは地域包括支援センターの相談窓口を活用するのが最善の方法です。
地域包括支援センターでは、以下のような支援が受けられます。
・介護に関する総合相談
・介護予防や日常生活支援の情報提供
・介護サービス事業所の紹介
・高齢者の権利擁護(成年後見制度の相談など)
■ 家族との話し合いをする

介護が必要になると家族間でどのように支えていくかを決めなければなりません。家族ですべて支えるのか、分担制にするのか、施設へ入所させるのか、介護が必要になってから話し合うのではなく、予め家族と相談しておくことでスムーズに対応できるようになります。
介護が必要になる前に話し合いをするメリットは、以下の通りです。
介護が必要になってからでは、本人が明確に意思表示できない場合もあります。本人の希望を事前に聞いておくことで、将来的に適切な選択ができます。
介護は突然やってくるものです。誰がどのように介護を担うのかを決めておくことで、家族内での混乱や負担の偏りを軽減することができます。
介護には施設利用料や医療費、介護用品代や交通費など様々な費用がかかります。事前に調べておくことで、経済的な準備ができ突然の出費に慌てることがなくなります。
自宅での介護が難しい場合、特別養護老人ホーム(特養)や介護付き有料老人ホームなどの施設入所を検討することになります。施設は入所までに時間がかかることが多いため、事前に情報を集めておくことができます。
介護は転倒・骨折・脳卒中・認知症の発症など、突然の出来事により一気に進むことが多いです。事前に話し合っておくことで、緊急時には誰が動くのか、どこに連絡すればいいのかを決めておくことで、スムーズに対応できます。
介護保険サービスを活用するには、要介護認定を受ける必要があります。申請手続きには時間がかかるため、介護サービスを早めに活用できると本人の負担が減り、家族の負担も軽減されます。
介護分担は家族間のトラブルが発生しやすくなります。家族間のコミュニケーションを大切にし、事前にルールを決めておくことで、トラブルを最小限に抑えることができます。
精神的・経済的な負担を軽減するためにも家族との話し合いは重要です。

介護保険は要介護認定後でないと利用することができないと思われておりますが、実は認定前から活用できるサービスもあります。
総合事業は認定前から活用することができ、特別訪問看護は支給限度額がある介護保険ではなく、限度額を気にせずに利用することができる医療保険が適用されるため、手厚い看護が必要な場合は不可欠な制度です。
賢く介護保険を活用し、より安心できる生活を実現するためにも、必要なサービスを理解し早めの情報収集と適切な制度の活用をしていきましょう。
中央法規「ケアマネジャー」編集部
本書は、ケアマネジャーをはじめとする相談援助職向けに、介護保険制度の概要、利用の手引き、各サービスの内容・報酬単価、ケアプラン作成時のポイントなどを、オールカラーでイラスト・図版を交えてわかりやすく解説しました。