家族の介護を理由に離職する人数は、2000年初期には4万人程度でしたが、2018年には10万人を超えており、大きな社会問題となっています。
介護を必要とする人は年々増加しており、今後さらに介護離職者数が増えることが懸念されています。
※参考:厚生労働省「雇用動向調査」
■ 介護をする環境は突然訪れる
働き盛りの会社員が、突然介護問題に直面してしまうケースは、多いと言われています。
日常生活が一変し、介護をする側も、介護をされる側も、先々の不安を感じてしまうでしょう。
50歳を過ぎると、介護離職をする人が急激に増えると言います。
これから先のことは誰にもわかりませんが、介護のことでストレスを感じる前に、情報収集をして備えておくことが大切です。
■ 介護離職の前に介護休業または介護休暇を把握しておこう
突然身内の介護が必要になった場合は、介護離職を考える前に確認しておくことがあります。
それは介護休業、または介護休暇です。
勤務先ごとに就業規則の記載の有無は異なりますが、介護休業制度の記載がない場合でも、要件を満たしていれば、介護休業を取得することができます。
介護休業の対象となる労働者
- この法律の「介護休業」をすることができるのは、要介護状態にある対象家族を介護する男女労働者です。
- 日々雇い入れられる者は除かれます。
- 期間を定めて雇用される者は、申出時点において、次のいずれにも該当すれば介護休業をすることができます。
① 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
② 取得予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までの間に、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと - 労使協定で定められた一定の労働者も介護休業をすることはできません。
※出典:厚生労働省「介護休業制度」
介護休業または介護休暇を申請する場合は、要介護状態にあることを証明する書類の提出を求められることもあります。
また介護休業期間は、93日までとなっており、勤務先で確認しておくと良いでしょう。
さらにこの期間の給与は支払われません。有給休暇とは異なりますので、注意する必要があります。
■ 介護にかかる費用を知っておこう
介護離職した場合は、介護者の収入がなくなりますので、自身の生活に困窮する場合があります。
介護離職しない場合は、仕事と介護を両立させようと在宅介護を選択した結果、肉体的・精神的・時間的なストレスに陥りやすくなる場合があります。
在宅介護にかかる月額費用は、要介護度で異なりますが、平均5万円という調査結果があります。
(介護サービス利用料…1万6千円 介護サービス以外の費用…3万4千円)
※参考:家計経済研究所が2016年に実施した「在宅介護のお金と負担」より
有料老人ホームにかかる月額費用は、施設ごとに異なりますが、25万円前後かかると言われています。
金銭的なところを見てしまうと有料老人ホームよりも、在宅介護が経済的には良いように見えてしまいます。
しかし、様々なストレスや身体的な疲労を抱えてしまうことにも繋がりますので、総合的に判断するようにしましょう。
■ 公的介護保険制度を利用しよう
介護保険は、40歳以上の人が保険料を支払い、介護が必要になったときに定率を負担して、必要なサービスを受けられる制度のことです。
また介護保険は、現金による給付ではなく、介護を必要とするきに受けられる介護サービスを提供します。
■ 介護サービスの内容を理解しよう
介護サービスは、ホームヘルパーによる訪問介護や日中だけ施設に通ってサービスを受けるデイサービスなどがあります。
自分の住まいを中心として利用する「居宅介護サービス」や、施設に入所して利用する「施設サービス」、「地域密着型サービス」を受けることができます。
介護サービスを利用する場合には、まず市区町村および地域包括支援センターなどへの申請が必要です。
介護サービスの内容は、在宅介護や老人ホームの施設タイプなどで異なります。
■ 介護離職経験者を参考にしよう
転職やライフステージの変化、介護や看護を理由に会社を辞めてしまう人は、自己都合退職となります。
なかでも介護を理由に退職する人は、年々増加傾向にあります。
介護をする状況は、誰にでも訪れる可能性があります。
その際に、介護と仕事を両立していくのか、介護に専念するかの判断は、非常に難しいことだと思います。
介護離職をした方で、また仕事を始めようとした場合の再就職率は、約 40%と言われています。
※参考:総務省「介護施策に関する行政評価・監視 -高齢者を介護する家族介護者の負担軽減対策を中心として」
また、2012年に厚生労働省が実施した「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」では、介護離職者のうち、64.9%が仕事を続けているときより、辞めてからの方が精神的な負担が増したと答えています。
※参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」
家族や身内の介護が必要になったからといって、離職を決断するには大きなリスクを伴います。
友人や親戚に、介護による離職を経験された方がいる場合には、迷わず相談するようにしましょう。
また、まわりに経験した方がいない場合には、離職をする前に地元の地域包括支援センターや社会福祉協議会などで相談するようにしましょう。
介護離職を考えている方は「介護をしなければならない」という強い使命感を感じてしまうことでしょう。
そして、会社の上司や同僚のにも介護離職をいつ打ち明ければ良いのかで悩んでしまうこともあるでしょう。
このように介護離職のことを一人で抱え込まないためにも、日頃から周囲とのコミュニケーションを通して、介護に対する理解を深めておくことが大切です。